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合法的支配

合法的支配は、次のような相互に関連し合う諸観念の妥当にもとづいている。
1 任意の法が、協定または指令によって、合理的な──目的合理的または価値合理的な(あるい
はその双方の)──志向をもって、また次のような要素を掲げて、制定されうるという観念。すなわ
ち、少なくとも当該団体の成員によってそれが遵守され、また通常は、さらに、その団体の勢力圏(領
域団体の場合にはその領域)内で、その団体秩序によってそれが重要であると宣言された一定の社会
関係に入り・またそこで社会的に行為するひとびとにとっても、遵守されるべきであるという要求で
ある。──
2 すべての法は、その本質上、抽象的な・通常は意図的に制定された諸規則の体系であり、司法
は、これらの諸規則の個々のケースへの適用であり、行政は、団体秩序によって予定された利益を、
法規則の限界内で、また、一般的な形で示されうるような諸原理──団体秩序において是認されてお
り、あるいは少なくとも非認されていないような諸原理──にしたがって、育成することであるとい
う観念。──
3 したがって、合理的に典型的な合法的ヘル、すなわち「上司」は、彼が指令を発する──した
がって命令する──場合、彼自身もまた非人格的な秩序に服従しており、彼はその指令をこの非人格
的な秩序に準拠させているのだという観念。──
このことは、「官吏」ではないような合法的ヘル、例えば選挙制の大統領についてもあてはまる。
4 服従者は、──よく使われる言い方にしたがえば──仲間としてのみ、また「法」に対しての
み服従するのだという観念。
社団の仲間、ゲマインデの仲間、教会成員として、国家にあっては市民として。
5 3の点に照応して、団体仲間は、彼らがヘルに服従することによって、ヘルの人に服従してい
るのではなく、右の非人格的な秩序に服従しているのであり、したがって、この非人格的秩序によっ
3
てヘルに与えられた・合理的に限界づけられた・ザッハリッヒな管轄権の範囲内においてのみ、服従
の義務を負うのだ、という観念がおこなわれている。
したがって、合理的支配の基礎的な諸範疇は次のようなものになる。
1 官職事務の継続的な・規則に拘束された経営、この経営は、
2 権限(管轄権)の範囲内でおこなわれる。権限は、
(a)作業の分配によってザッハリッヒに限界づけられた作業業務の範囲を意味し、
(b)そのためにあるいは必要であろう命令権力の付与を伴い、また
(c)必要に応じて許される強制手段と、この強制手段の適用の諸前提とについての明確な規定を
伴う。このように秩序づけられた経営を、「官庁」と呼ぼう。
この意味での「官庁は」、「国家」や「教会」におけると全く同様に、いうまでもなく、大規模な私的経営や
政党や軍隊にもある。選挙制の大統領(あるいは大臣たちや選挙制の「人民委員」たちの合議体)も、この
用語法の意味における「官庁」である。しかし、これらのカテゴリーは、ここではまだわれわれの問題では
ない。どの官庁も同じ意味において「命令権力」をもっているというわけではないが、この区別はここでは
われわれの関心をひかない。
これに加えて、
3 さらに、官職階層制の原理が加わる。官職階層制の原理とは、各官庁について明確な統制=監
督官庁を定め、下級官庁の決定について上級官庁への上訴や訴願の権利をこれに伴わせることであ
る。この場合、訴願受理機関が、変更されるべき指令をみずから「正しい」指令によって置きかえ
るか、それとも、この仕事を、訴願が向けられた下級の官職に委ねるか、またどのような場合にど
のような方法がとられるかという問題については、規律の仕方はさまざまである。
4 手段の準拠となる「規則」は、
(a)技術的規則であることもあり、
(b)規範であることもある。
そのいずれも場合にも、これらの規則を適用するためには、完全な合理性を達成しようとするか
ぎり、専門的訓練が必要である。したがって、通常は、効果的な訓練を受けたことを証明しうる者
だけが、一つの団体の行政幹部に参加する資格を認められ、また、このような者だけが官吏として
任用されうるのである。「官吏」は、合理的な諸団体──それが政治的・教権制的・経済的(とりわ
け資本主義的)あるいはその他の団体であるとを問わない──の典型的な行政幹部を形成するもの
である。
5 (合理的なケースにおいては)、行政手段や調達手段から行政幹部が完全に分離される、という
原則がおこなわれる。行政幹部に属する官吏・職員・労働者は、物的な行政手段・調達手段を自分
で所有してはおらず、これを現物または貨幣の形で支給されて受けとり、また計算報告義務を課せ
られている。官職(または経営)財産(ないしは資本)と私的財産(家計)との、また官職経営の
場所(役所)と住居との、完全な分離の原則が存在しているわけである。
6 完全に合理的なケースにおいては、保有者による官職地位の専有ということは全く存在しな
4
い。「官職」に対する「保持権」が設定されている場合(これは例えば裁判官にみられるし、最近で
は官吏層や、また労働者層についてすら、そのますます多くの部分にみられるようになっている)、
これは、通常は、官吏による専有という目的に奉仕するものではなく、彼の官職において、純粋に
ザッハリッヒな(「独立的な」)・規範にのみ拘束された仕事を保証するという目的に奉仕するもので
ある。
7 行政の文書主義の原則が、──口頭による討論が事実上常則になっており、あるいは端的に命
ぜられているような場合においても──おこなわれている。少なくとも、予備的な討論や最終的な
決定、あらゆる種類の処分や指令は、文書の形で固定される。文書と官吏による継続的な経営とは、
あい合して役所を形成するが、この役所こそあらゆる近代的な団体行為の核心そのものをなしてい
る。
8 合法的支配はきわめて種々さまざまな形態をとりうるが、これらの形態についてはのちに別個
に論ぜられるはずである。以下においては、まず第一に、とくに意図的に、行政幹部の最も純粋に
支配的な構造、すなわち「官吏制度」・「官僚制」の構造代家が、理念型的に分析される。

マックス・ヴェーバー『支配の諸類型』

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